業務標準化とは、誰もが同じように成果を挙げられるように組織的に業務プロセスの最適化を行うことを指します。
定義だけ聞いても
「つまり業務標準化ってどういうこと?」
「業務標準化のやり方を詳しく知りたい!」
「業務標準化のメリットとデメリットって何?」
などの疑問や悩みを抱える方も多いはず。
そこで、この記事では製造業に勤めている方や現場改善したい方に向けて、業務標準化の定義やメリットとデメリット、業務標準化を成功させるためのコツや具体的な事例について解説します。
この記事は、どの業務を標準化すべきか、どのように標準化を進めるかという視点から、業務標準化の進め方も紹介しています。製造業に勤めている方や現場改善したい方が業務標準化の理解を深められる内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
業務標準化とは
「業務標準化とは」という疑問にこたえるために、ここでは
- 業務標準化を分かりやすく
- 業務標準化の目的
の2つに分けて解説しましょう。
業務標準化を分かりやすく解説
業務標準化とは、誰がやっても成果を挙げられるよう業務プロセスを組織的に最適化することを指します。なぜ、業務の標準化を行うのかと言えば、業務の品質向上や生産性向上につながるからです。
従来からの課題は、業務ごとに担当する従業員によって手順が変わってしまうということでした。しかし、業務標準化によって進め方・やり方の手順が統一され、手順が変わってしまうという課題は解決可能です。
さらに、業務標準化を行うことにより、業務の手順を見直し、ムダやムリを排除できるため、業務の効率化が期待できます。業務の効率化ができれば、より少ない労力やコストで成果を生み出せるので、企業の生産性の向上につながります。
業務標準化の目的
業務標準化の目的としては、「誰でも同じ成果を出せる」「品質を均一に保つ」といったことが挙げられます。
製造業などで、業務が属人化してしまえば、一人の従業員への負担が大きくなり、長時間労働につながります。長時間労働が続くことで心身に不調をおこす可能性がありますし、属人化した業務を担っている方が休むことで、業務が進まず、組織全体に損失を与えてしまうことになりかねません。
そこで、業務標準化の「誰でも同じ成果を出せる」「品質を均一に保つ」といった目的を達成するための手法として
- 業務フローの標準化
- タスクの標準化
- 平準化
の3つを解説しましょう。
業務フローの標準化
業務フローの標準化とは、業務の進行手順を一定にすることです。業務フローの標準化により、誰が行っても同じ品質の成果を生み出すことが可能となり、結果的に全体的な品質向上につながります。また、標準化された業務フローは、新入社員や他部署から異動してきた従業員の指導にも役立つ効果もあります。
例えば、製造業における製品組立の業務フローを考えてみましょう。標準化された業務フローがある場合には、業務フローの各工程の作業内容、順序、品質基準が明確になり、新たに組立業務を担当する従業員でも、標準化されたフローに従うことで製品の品質を一定に保つことが可能となります。
タスクの標準化
タスクの標準化とは、個々の業務内容を一定の形にすることを指します。タスクの標準化によって、業務の進行方法や手順が統一され、担当者による手順の変更がなくなるため、製造業での業務改善の一環として、タスクの標準化は重要と言えるでしょう。
例えば、工場ではマニュアルや手順書を整備し、担当者は記載されている作業内容、工程、品質基準などを順守して業務に臨むことが可能です。結果として、業務の属人化を防ぎ、組織全体で効率的に業務を進めることが可能になります。
またタスクの標準化は、新入社員や他部署から異動してきた従業員への指導にも役立つでしょう。標準化された手順やフローを共有することで、誰でも適切な手順で業務を行え、ミスや漏れを防ぐことが可能です。
平準化
平準化とは、業務の負荷を均等に分散させることです。平準化により、従業員間の作業量や業務負担の偏りをなくし、均等・均一化することが可能になります。
例えば、ある特定の従業員しか出来ていなかった生産ラインの作業を標準化することで、他の従業員のスキルアップや従業員の業務負担の軽減にもつながります。
平準化は従業員間で業務量に偏りがなくなるため、残業時間や有給取得などへの不満の解消にもつながるでしょう。
業務標準化のメリット
業務標準化のメリットとしては、主に
- 品質の向上
- 属人化防止
- 業務効率化
の3つがありますので、それぞれ解説しましょう。
品質の向上
業務標準化を進めることで、誰が行っても同じ流れで業務を遂行でき、組織全体の業務品質の向上が期待できます。なぜなら、業務標準化により、作業のばらつきがなくなり、安定した品質を保つことが可能になるからです。
例えば、工場でマニュアル・手順書を整え、担当者は記載された作業内容・工程・品質基準などを順守して業務を進めることで製品品質の向上に繋がります。結果として、顧客から自社へ信頼を得たり満足してもらえたりでき、業績を安定させることが可能になります。
属人化防止
業務標準化は、特定の人に依存する業務、いわゆる属人化を防ぐ効果もあります。なぜなら、業務の手順やフローが明確になることで、特定の人がいないと進まないという状況を防げるからです。
例えば、特定の従業員しかその業務の処理や作業方法を知らないため、病気やケガといった不測の事態で長期休職となったり、異動や退職があったりした場合にほかに対応できる人がいない、という事態が起きてしまいます。いわゆる「属人化」です。
そこで、業務標準化を行えば「あの担当者はいないけれど、大丈夫!業務の手順やフローが明確になっているから!」と、属人化を防げます。
このような属人化による問題や解消する方法を専門家が解説する動画も公開しているので、併せてご覧ください。
業務効率化
業務標準化によって、業務手順の見直しをはかり、ムダやムリを排除し、ムラがあればできるだけムラをなくすことで、業務が効率化します。効率化すると、労力やコストを削減でき、生産性の向上につながります。
例えば、製造現場では、標準化された作業手順により、作業にかかる時間を短縮でき、同じ時間で多くの成果を出せたり、違う業務に時間を回せたりすることも可能です。業務標準化による業務効率化で企業の生産性の向上が期待できるでしょう。
また、業務標準化によって、業務の手順が統一され、担当する従業員ごとに手順が変わることはありません。特定の従業員に偏って依存することなく企業全体で効率的に業務を進めていくことが可能になります。
業務標準化のデメリット
業務標準化のデメリットとして、
- 標準化しないほうがいい業務もある
- モチベーションの低下
- マニュアル化により業務が単調になることがある
- 業務の改善が滞る可能性がある
の4つを解説しましょう。
標準化しないほうがいい業務もある
業務標準化は、多くの場合、効率化や品質向上が期待できますが、全ての業務が標準化に適しているわけではありません。なぜなら、業務の性質や目的によっては、標準化が逆に生産性を阻害する可能性があるからです。
例えば、
- 特定の知識やスキルが必要な専門業務
- 一般的な業務とは異なる特殊な業務
では、標準化が制約となり、業務の質を下げる可能性があります。
特定の知識やスキルが必要な専門業務
専門業務はその専門性からくる柔軟性と独自性が求められる業務であり、性質上、一律の手順やルールに縛られることが難しい場合があります。
例えば、製造業における設計や研究開発部門の業務は、新しいアイデアや解決策を生み出すための創造性が必要とされます。創造性が必要な業務を標準化すると、創造性が制約され、新たな価値を生み出す可能性が低下する可能性があります。
一般的な業務とは異なる特殊な業務
特殊な業務とは、一般的な業務とは異なる特性を持つ業務のことを指します。
特殊な業務は、特定の状況や要件に対応するための柔軟性が求められます。なぜなら、特殊な業務は一般的な業務とは異なる特性を持つため、一律の手順やルールに縛られると、その特性をいかすことが難しくなるからです。
例えば、製造業におけるカスタムオーダーの製品製造や、特定の顧客要求に対応するための業務は、要件に対応するための柔軟性が求められるため、業務標準化をしてしまうと柔軟性が発揮されにくい場合があります。
モチベーションの低下
業務標準化を意識しすぎると、作業手順が一定になりすぎてしまい、個々の裁量や創造性を制限する可能性があるため、従業員のモチベーションが低下することも考えられます。
例えば、製造ラインでは、従業員が自らのアイデアをいかして作業を行っていたとしましょう。しかし、業務が標準化されると、従業員のアイデアをいかす余地がなくなり、結果としてモチベーションが低下する可能性があります。
従業員のアイデアをいかす余地を見出すためには、標準化の過程で従業員の意見を取り入れ、改善していくことや従業員の役割や責任の中で成果を出す機会を設けることが重要です。
マニュアル化により業務が単調になることがある
業務標準化とマニュアル化は厳密には違いますが、似ている概念です。業務標準化は改善活動のひとつですが、マニュアル化は作業をただ一定に保つための活動です。
業務がマニュアル化されると、作業が単純化され、日々の業務がルーティン化する可能性があります。結果として、業務標準化はマニュアル化となってしまい、業務が単調になることがあるというデメリットも持っています。
例えば、製造ラインの作業が全てマニュアル化された場合、従業員はマニュアル通りの作業を繰り返すだけとなり、業務が単調と感じられるでしょう。
業務が単調になることがあるという問題を解決するためには、マニュアル化ではなく改善活動のひとつである業務標準化を意識して、従業員に新たなアイデアの提案を促すことが重要です。
業務標準化の進め方
業務標準化は次の4つの段階、
- 現状把握
- 優先的に標準化すべき業務の選定
- マニュアルの設計と業務フロー作成
- 運用と改善
で進めましょう。
現状把握
現状を理解しなければ、何を改善すべきか、どの業務を標準化すべきかが見えてこないため、現状の把握は重要です。
製造業の現場であれば、各工程の工数、頻度、難易度などを数値化し、業務の定量化を行います。また、担当者へのヒアリングを通じて、現場の声を直接吸い上げることも重要です。
生産性が上がらない業務や、特定の担当者が不在だと進まない業務などの問題点を洗い出し、分析することが可能となります。
優先的に標準化すべき業務の選定
全ての業務を一度に標準化しようとすると、コストや手間がかかりすぎてしまうため、現状把握により明らかになった問題点を踏まえて、標準化すべき業務を選定します。
優先順位をつけて一つずつ解決していくことが効率的です。選定するときは、属人化している業務だけでなく、従業員によって品質にばらつきのある業務も標準化の対象とすればさらに良いでしょう。
マニュアルの設計と業務フロー作成
業務を選定したら、フローチャートなどを使って業務の流れをわかりやすく可視化します。可視化が必要な理由として、業務フローを可視化することで全体を俯瞰して見られ、不要な作業を削減したり、順序を入れ替えたりなど、業務フローの整理がしやすくなるからです。
整理した内容をもとに、業務フローの再設計を行い、作業標準書などを作成します。
標準作業手順書の作成方法やコツについては次の記事で紹介しています。
関連記事:SOP(標準作業手順書)の意味を解説!マニュアルとの違い、作成の4つのコツとは?
運用と改善
作業標準書などの作成を行ったら、定期的に見直し、改善を行うことが重要です。業務環境は常に変化し、新たな問題が生じたり、より良い方法が見つかったりすることがあります。
製造業の現場であれば、新たな機械の導入や作業手順の改善など、標準化した業務に変更が生じることは珍しくありません。そのため、定期的に業務フローやマニュアルを見直し、現場の声を反映させることで、業務標準化の効果を最大限に引き出すことが可能となります。
また、標準化した業務の運用状況をモニタリングし、問題が発生した場合はすぐに対応する体制を整えることも重要です。
業務標準化を成功させるコツ
業務標準化を成功させるには、次の22つのコツがあります。
- 業務標準化の目的を共有する
- 現場の声を反映する
それぞれ解説します。
業務標準化の目的を共有する
業務標準化を成功させるための最初のコツは、業務標準化の目的を全員で共有することです。業務標準化の目的が明確でなければ、取り組みは単なる形式的なものになり、効果が期待できない取り組みになってしまいます。
例えば、目的が「全従業員が業務において同じ成果を出せるようにすること」であるなら、目的を全員が理解し、行動することが重要になります。具体的には、定期的なミーティングや内部コミュニケーションツールを活用して、目的を常に共有し、共有した情報をもとに行動を促すことが求められます。
現場の声を反映する
業務標準化を成功させるための2つ目のコツは、現場の声を反映することです。業務標準化は現場の業務を改善するためのものであり、現場の声を無視して行われる標準化は、現場のニーズに合わない可能性が出てきてしまいます。
具体的には、現場の従業員からのフィードバックを定期的に収集し、業務標準化のプロセスに反映させることが求められます。現場の声を反映することにより、現場の実情に基づいた効果的な業務標準化を進めることが可能です。
業務標準化に成功した大同工業株式会社の事例
業務フローの可視化ツールと動画マニュアルの導入で業務標準化に成功した大同工業株式会社の事例を紹介しましょう。
業務フローの可視化ツールの導入
業務フローを明確にすることで、全員が同じ理解を持ち、業務の効率化をはかれるため、可視化ツールの導入は、業務標準化を成功させるためには重要です。
大同工業株式会社では、新入社員の教育やマニュアル作成の工数がかかるという課題がありました。また、トレーナーによって指導内容が異なり、業務品質にバラつきが出るという問題も存在していました。
抱えている課題を解決するために、業務フローの可視化ツールを導入。結果、マニュアルの作成工数を5割削減し、動画による教育で指導内容が統一され、業務標準化を達成できました。さらに、全社員が正しい業務手順を身につけ、教育工数を8割削減に成功しました。
大同工業株式会社の実際の事例については次の記事で紹介しています。
動画マニュアルの導入
動画は視覚的な情報を伝えられ、文字情報も理解しやすいため、動画マニュアルの導入も、業務標準化を推進する上で有効な手段です。
大同工業株式会社では、試験手順の小さな違いにより、ヒヤリハットや評価結果のエラーが発生するという課題がありました。課題を解決するために、tebikiの動画マニュアルを導入。結果、部内全員で試験手順を再標準化でき、試験におけるヒヤリハットや評価エラーを削減できました。
大同工業株式会社が従来型の教育の限界を感じてから業務標準化に成功への取り組みは次の資料を是非ご確認ください。
業務標準化を行い、自社の現場改善に活かそう!【まとめ】
この記事では、業務標準化は、製造業における現場改善の一環として重要な役割を果たしていることを解説しました。業務フローの標準化、タスクの標準化、平準化は、業務標準化の主要な目的であり、達成することで品質の向上、属人化の防止、そして業務効率化を実現することが可能となります。
一方で、専門業務や特殊な業務は標準化するよりも個々の専門性をいかした方が良い場合があります。また、業務が単調になることでモチベーションが低下する可能性もあるため注意しましょう。
業務標準化を進めるときには、現状把握、優先的に標準化すべき業務の選定、マニュアルの設計と業務フロー作成、そして運用と改善というステップを踏むことが重要であり、業務標準化の目的を共有し、現場の声を反映することで、業務標準化の成功が期待できます。
なかでも大同工業株式会社は業務フローの可視化ツールの導入や動画マニュアルの導入をし、業務改善ができた事例のひとつです。可視化ツールの導入や動画マニュアルといったツールを用いることで、業務標準化をより効果的に進めることが可能となります。
おすすめの動画マニュアルのツールとしてはtebikiがあります。大同工業株式会社を業務改善へと導いたツールをぜひこの機会に導入してみてはいかがでしょうか?