目次
設備保全とは
設備保全の概要
設備保全とは、現場の生産機器や電子機器設備を減価償却の期間を超えて長期間使うために、日々点検しながら設備を活用することです。設備保全を行うことで、トラブルなく生産ラインの稼働を続け、納期の遅延や不良品率の増加といった利益に直結するような問題を予防します。
設備保全に関する資格取得のメリット
設備保全に活かせる資格として、「機械保全技能士」があります。
機械保全技能士は、機械や設備の保守・点検・修理を専門的に行う資格者で、製造業や施設管理で重要な役割を果たします。機械のトラブル解決やメンテナンス計画の策定など、設備の順調な運用を支えるスペシャリストです。
機械保全技能士の資格を持つと設備の保守と点検を効率的に行い、定期的なタイミングで予防保全を実施する能力が向上するため、コスト削減と生産性の向上につながります。
保守メンテナンスとの違い
保守メンテナンスは必要に応じて整備と修理を行うことであり、設備保全と似ていますが考え方が異なります。保守メンテナンスとは、ある企業の生産設備を導入して、その企業へ金銭を支払い専門的なサービスを受けることです。設備保全とは、企業が減価償却資産を維持管理するために、自社内で最小限の工数にて日々管理する活動となります。
具体的な事例で説明します。保守メンテ事例として、企業は工作機械を大手A社から購入しました。企業は大手A社と保守契約を結び、減価償却範囲内で活用することを想定して設備を利用します。ある時、その設備にエラー表示が発生し、設備が作動しない場合は、保守メンテナンス契約に基づき大手A社の子会社である保守管理会社が設備を修理します。
それに対し設備保全は、企業が毎日工作機械を使うために機械の状態把握を行います。異音はないか?作動油の色が汚れていないか?フィルター目詰まりはないか?電気ケーブルに破れはないか?などの日常点検を行う活動です。
設備保全の種類とそれぞれの考え方
設備保全には3種類の考え方があります。何をどうすればいい?に着目して解説します。
予防保全
予防保全とは、設備が問題なく稼働しているが、問題が起きる前に対策を実施する保全活動です。あらかじめ決めた事に対し、定期的な保全業務を行います。部品が壊れる前に交換作業をして、設備を止めずに稼働を維持する活動です。
予防保全は定期メンテナンスとも呼ばれ、電力・ガス・水道の事業者や通信事業者等の社会インフラで採用されています。
予防保全のメリットは
・製造ライン復旧までのダウンタイムの削減
・ダウンタイム削減による生産性向上
・保全計画が立てやすい
などがあります。
一方、予防保全のデメリットは
・定期的なメンテナンスが必要なため、作業工数が増える
・過度な予防保全は、必要以上に機器を停止させるため、かえって生産性の低下につながる
などがあります。
予防保全の際には、こうしたメリット・デメリットを考慮したうえで、バランス良く実施する必要があります。
予知保全(予兆保全)
予知保全(予兆保全)とは、故障がおきる予兆を見極め確認された時点で、部品交換や部品保守などの保全作業を実施する活動です。劣化予兆診断とも言われます。近年では、人が目視や五感では認識できない項目をセンサー等で把握し、保全作業に活かす事例が数多く見られます。
センサー進化と通信技術発展により、様々な設備データをリアルタイムで取得できるため、そのデータと故障関係性をデータで理解する分析手法が開発されています。
現場改善ラボでは、予防保全と予知保全についてより詳しく解説した記事を公開しております。
より具体的で詳しい内容を知りたい方は、是非下記の記事をご参照ください。
関連記事:予防保全と予知保全の違いは?メリットや種類を分かりやすく解説!
事後保全
事後保全とは、設備停止や不良品発生等をきっかけとして実施する保全活動のことです。皆様がよく経験されている身近な内容です。ある時、スマートフォンが突然作動しない事がありますが、そんな時に実施する活動です。
一番身近な事象ですが、設備が止まったら困るけど事前対策はしていない。そんな状況を解決するために、日々の保全活動が重要となってきます。
設備保全の重要性と効果
一般的に設備保全へ取り組むことで、企業は以下の効果を得ることが可能です。
品質のバラつきを防ぐ
製造業やサービス業において、顧客満足を得るためには、提供する製品やサービスに品質のバラつきが存在すると好ましくありません。その品質を安定させるために、設備維持管理が非常に重要です。
食品製造業であれば「いつもと味がちがう?」といった場合や、通信サービス業であれば「今日は通信がよく途切れる?」といったことが繰り返されると、顧客の不満が蓄積されていき、最終的にはスイッチング行動を起こし企業損失が発生します。
そのような顧客行動を回避するためにも、企業にとって設備保全は重要な管理項目です。
設備ライフサイクルコストの最適化
設備保全の実施により、設備ライフサイクルコストを最適化することができます。設備の寿命を最大限に延ばし、効率的な運用を確保するためには、定期的な点検、保守、修理が必要です。これにより、初期投資と運用コストを最適化し、全体的な経済的効益を向上させることができます。
予防保全は設備の故障や停止時間を減少させ、生産性を向上させます。また、非計画的な修理や緊急対応に伴うコストを削減し、製品の品質と信頼性を確保します。長期的な視点から見ると、設備保全は設備の寿命を延ばし、新規投資を遅らせることができます。
故障による製造ライン停止を防ぐ
製造業、特に量産部品を製造している中小企業は、生産ラインが止まると納入先顧客へ多大なる損害を発生させることに繋がり、これまで築いてきた信頼が低下します。また自社の売上損失や対策書発行など費用対効果に見合わない活動に繋がります。
また、設備停止による部品の品質変化が発生することで、部品全数検査など予定外の出費に繋がり企業利益が低下します。これを回避するために設備保全は重要です。
設備安全性を維持する
日々の日常管理をしていたとしても、設備停止する場面は必ず存在します。設備停止を復旧させるために、人間が作業をしなければなりません。
少しでも早く設備を復旧し、通常稼働へ戻すために人の暗黙知に頼る活動ではなく、マニュアルを整備し安全を担保する活動が重要になります。
設備保全における課題
中小企業での実施が困難
中小企業では、「人材がいない」「引継ぎができていない」などの理由で設備保全の実施が困難です。一定の事業規模を有する企業では、専属とはいかないまでも壊れた設備を整備する従業員が社内にいる場合が多いです。また、大型設備では保守契約を結び、専門業者が修理してくれる場面も存在します。
しかし、300名以下の中小企業や小規模事業者だとそんな訳にはいきません。今日担当者お休みで・・なんてことは日常事ではありませんか?長時間設備が止まる前には、いつもと音が違う、なにか異臭がするなど必ず予兆があります。設備保全と言っても決して大げさなことではなく、日々の小さな確認で対策できることが沢山あります。
不注意によるヒューマンエラー
設備保全では、点検の見落としや、設備点検の確認不足などのヒューマンエラーが発生することがあります。これらのポカミスは、確認を怠った結果引き起こされるミスであり、発生頻度も高い傾向にあります。
そのため、設備保全を最適化させるためには、現場でのヒューマンエラーを防ぐ必要があります。
ヒューマンエラーの原因や具体的な対策方法については、以下の記事をご参照ください。
関連記事:ヒューマンエラーとは?なぜ起きる?防ぐために必要な8つの対策
業務の属人化
設備保全では、特定の従業員が担当することが多いため、業務が属人化しやすいです。
例えば、ベテランの従業員じゃないと、設備に対する設備異常の早期発見ができないため、トラブルが増えてしまいます。設備保全の属人化が進むと、結果として生産性の低下を招きます。
そのため、設備保全に取り組む際には、業務の属人化を防ぐことを意識すべきです。
現場改善ラボでは、設備保全の属人化を防ぐ具体的な取り組み方法について専門家による解説動画を配信しています。設備保全の属人化解消について詳しく知りたい方は、下記のリンクからお申し込みください。
設備保全のあるべき姿とは
予防保全の管理サイクルを回し続ける
設備保全を最適化させるためには、設備や機器の故障を未然に防ぐための予防保全を行うことです。そのためには、予防保全の管理サイクルを回し続けることが重要です。
具体的には、以下のプロセスで行うのが効果的です。
・過去の稼働データから設備保全の計画を立てる(Plan)
・計画に基づき、設備の点検を実施する(Do)
・設備の状態を監視し、異常がないか確認する。(Check)
・設備停止の原因を解析して、計画に組み込む(Act)
常に予防保全のPDCAサイクルを回し続けることで、継続的かつ効果的な設備管理を実施できるでしょう。
ITツールを活用する
ITツールを活用することによって、設備保全を最適化させることが可能です。設備保全の課題として、設備保全に関する知識が属人化していることが挙げられます。特に中小企業の現場だと、人手不足により技術伝承ができておらず、設備保全に関するナレッジが共有されていません。
また、設備保全に関するマニュアルがあったとしても、紙のマニュアルだと作成や管理が大変な上に、せっかく作ったマニュアルを読んでくれないという課題があります。、
このような課題に対しては、動画マニュアルで解決できます。動画マニュアルであれば、スマホやパソコンで作成・管理を一貫して行うことができます。また、スマホで簡単に見ることができるので、マニュアルを見るハードルが下がります。
動画マニュアルtebikiでは、動画マニュアルをデバイス一台で誰でも簡単に作成することができます。
また、動画内容の習熟度管理もできるため、従業員の教育管理ツールとしてもご利用いただけます。人手不足を補い、技術伝承を効率的に行うためには動画マニュアルが有効です。ぜひこの機会にtebikiの資料をダウンロードしてみませんか?
『3分で分かるtebikiサービス資料』
tebikiを導入した企業事例(堺化学工業株式会社)
堺化学工業株式会社では、工場の新設を加速させていく中で、新たな設備の取説や作業に関するマニュアル整備に課題を抱えていました。また、従業員も外国人が多く、日本語が話せない従業員への教育で課題が発生していました。
そこで動画マニュアル「tebiki」を活用し、工数がかかるマニュアル整備を動画で行い、自動字幕機能を用いた外国語翻訳によって、製造現場のノウハウを凝縮したデータベースを構築しました。
より詳細な、堺化学工業株式会社の事例は以下よりご覧ください。
関連記事:製造現場の教育を全社的にIT化。作業ノウハウを凝縮したデータベースを構築。
まとめ
人材不足や設備近代化に伴い、従来の伝承型による人材教育だけでは立ち行かない現実があります。しかし設備保全をやめてしまうと、品質のバラつきや生産ラインの長期停止など、最終的には会社の売り上げに大きな影響を及ぼす問題に発展します。
設備保全には日々の小さな確認で対策できることが沢山あります。ぜひ、そのような取り組みを継続していきましょう。