ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する規格です。自社の製品やサービスが管理されたプロセスを経て提供された商品であることを証明する指標となります。
また、ISO9001は業種や業態に問わず様々な組織が取得可能な規格です。業務効率の改善や組織体制の強化、自社ブランドの社会的信頼や顧客満足の向上が期待できます。一方で管理工数の増加や維持コストなど、事前に理解することが重要です。
そこで本記事は、ISO9001の内容や認証取得する流れ、認証取得するメリット・デメリットを解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
ISO9001とは?
ISO9001とは、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。一貫した製品やサービスを提供し、顧客満足度を向上させる目的があります。この章ではISOとは何か、ISO9001の目的や内容について解説していきます。
そもそもISOとは?
ISOとは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称で、国際的な標準である国際規格を策定している機関です。各国の国家標準団体で構成される非政府組織であり、日本を含む167カ国が参加しています。国際規格は製品の製造やプロセスの管理など、製品が安全で信頼性が高く、高品質であることを消費者に示す一つの指標です。
例えばネジは様々な種類がありますが、各国でサイズがバラバラだと消費者はどれを購入して良いかわかりません。ネジの寸法はセンチ(cm)ではなくミリ(㎜)で表し、外径は数値の前にMの記号をつけるなど世界共通のルールを策定し互換性を持たせています。
またISOは、2022年12月時点で24606の規格を策定しており、製品そのものを対象とする規格の他にマネジメントシステムを対象とする規格があります。本記事で解説するISO9001(品質マネジメントシステム)が対象のひとつです。
【参照:ISO_私たちに関して】
ISO9001の内容
ISO9001とは、品質マネジメントシステム(Quality Management System:QMS)と呼ばれ、組織のマネジメントに関する規格です。ISO9001の最終目標は顧客満足度の向上であり、一貫した製品やサービスを提供し続けられるプロセスの構築と改善が求められます。ISO9001を認証取得している企業や工場は、一定以上の品質を保証するプロセスが確立されている証です。
ISO9001は第三者認定制度が運営され、全世界で100万以上の企業や組織が認証取得しています。ISO9001を認証取得するには規格要求事項を満たし、審査機関による審査が必要です。ISO9001の規格要求事項は10章で構成され、4章以降が具体的な規格要求事項になります。
ISO9001規格要求事項
- 適用範囲
- 引用規格
- 用語及び定義
- 組織の状況
- リーダーシップ
- 計画
- 支援
- 運用
- パフォーマンス評価
- 改善
ISO9001のプロセス構築には、PDCAサイクルが用いられます。
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実施)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の頭文字を取った言葉です。仮説プロセスを循環させ、マネジメント品質を向上させる方法として用いられます。ISO9001の要求事項をPDCAサイクルに当てはめた事例が以下です。
- Plan(計画):4.組織の状況、5.リーダーシップ、6.計画
- Do(実施):8.運用
- Check(測定・評価):9.パフォーマンス評価
- Action(対策・改善):10.改善
- PDCAサイクルの支援:7.支援
具体的な事例として、製造業の事象で解説していきます。製造工程では誰が作業しても安定した製品が提供できるように、手順や仕組みなどのマニュアル作成が必要です。マニュアルを作成しただけでは実際の出来栄えが評価できないので、製品を測定して出来栄えを評価します。支援システムを用いて測定データを継続的に監視し、意図する数値になっていない場合は作業やマニュアルを改善していくイメージです。
製造業のPDCAサイクル事例
- Plan(計画):マニュアルを作成する
- Do(実施):マニュアル通りに作業する
- Check(測定・評価):マニュアル通り作業されているか製品を測定し、測定データを監視する
- Action(対策・改善):意図する測定データでない場合は作業やマニュアルを改善する
- PDCAサイクルの支援:不具合データ管理システム、データ計測システムなど
ISO9001を認証取得するメリット
ISO9001を認証取得するメリットは以下です。
- 顧客視点での信頼・安心感を得られる
- 業務の可視化・生産性向上につながる
- 部署や個人ごとの役割が明確になる
それぞれ詳しくみていきましょう。
顧客視点での信頼・安心感を得られる
ISO9001を認証取得するメリットの一つが、顧客視点での信頼や安心感が得られることです。ISO9001は組織のプロセスの質を保証する国際規格なので、正しい工程を経て提供された製品と評価され、取引先やお客様に安心感を与えられます。製品だけではなく、企業ブランドの価値や信頼の向上につながるでしょう。
業務の可視化・生産性向上につながる
業務の可視化や生産性向上につながることが、ISO9001を認証取得するメリットの一つです。作業フローや作業マニュアルが整備された状態であれば、組織全体で業務の可視化が可能となり、ムダを発見しやすくなります。
工数が掛かる作業や不具合が発生しやすい工程が抽出できるので、施策を導入するポイントが明確になり生産性向上やコスト削減が期待できます。継続的な改善を繰り返すことで、製品やサービスの品質を高めることが可能です。
部署や個人ごとの役割が明確になる
ISO9001を認証取得するメリットの一つは、部署や個人ごとの役割が明確になることです。役割が明確になれば部署や個人で責任を持って業務に取り組めるので、成果が得られやすくなります。また各々の進捗が可視化できるので、進捗が遅れているところをフォローしやすく組織全体で連携した業務遂行が可能です。
ISO9001を認証取得する流れ(規格要求事項)は?
ISO9001を認証取得する流れは大きく分けて3つのフェーズに分類され、認証取得には10章で構成される規格要求事項を全て満たす必要があります。この章では以下について解説します。
- ISO9001を認証取得する流れ
- ISO9001規格要求事項「4.組織の状況」の内容
ISO9001を認証取得する流れ
ISO9001を認証取得する流れを解説していきます。
事前準備
ISO9001を認証取得するまでの期間は、自社で取得するかコンサルタントに依頼する場合で異なりますが、一般的に半年から数年程度で取得可能です。事前準備として、品質方針やマニュアルの作成などマネジメントシステムの構築に2ヶ月〜8ヶ月かかります。
システム構築後は、実際に運用を開始し、マニュアルや帳票類と規格要求事項の整合性を確認し、ブラッシュアップしながら社内レビューでチェックと修正の繰り返しが必要です。
認証取得審査
ISO9001の認証取得には2段階で審査を受ける必要があります。一次審査では文書審査を中心に二次審査のための情報収集がメインです。一次審査と二次審査の間隔は原則で最短1ヶ月、最長6ヶ月です。
二次審査ではマネジメントシステムの運用状況が評価され、審査機関によって登録可と判断されれば約1ヶ月後に登録証が発行されます。
定期審査・更新審査
登録証の有効期限が3年なので、1年ごとに定期審査を受ける必要があります。審査内容はマネジメントシステムが継続して規格要求事項に適しているかの確認です。
2度の定期審査を経て、3年後の更新審査が合格となれば、新たに3年間有効な登録証が発行される流れになります。
ISO9001規格要求事項「4.組織の状況」の内容
「4.組織の状況」では、組織のどの部分にマネジメントシステムを適用するか決めるために、組織の置かれた状況と利害関係者のニーズの理解が要求されています。マネジメントシステムの形骸化を防ぐためにも、組織内部の役割の明確化が必要です。
- 組織の外部及び内部の課題を決定
- 利害関係者の要求事項を決定
- マネジメントシステムの適用範囲を決定
- マネジメントシステムを実行(プロセスアプローチ)
マネジメントシステムを実行して全体的なプロセスを監視する手法として、リスクに基づき考え方を取り入れたプロセスアプローチの理解が必要です。プロセスアプローチは組織全体が一つの目標に向かって業務を行い、一貫した活動を監視する手法として活用されます。営業部門や生産管理部門、製造部門など各々のプロセスで、顧客要求や会社の目的に応じて品質方針や組織戦略を策定することが重要です。
プロセスアプローチはタートル図を用いて評価します。プロセスアプローチを使用するポイントは、組織の目的を定め、プロセスごとにインプットとアウトプットを明確にすることです。
一つのプロセスでは、4Mと呼ばれる人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)に加え、評価基準(Monitoring)を追加して評価すれば抜け漏れがなく評価ができます。インプットの内容は、前工程から入ってくる情報やモノ、計画などが対象です。アウトプットの内容は、後工程へ渡す完成した商品や業務の成果など、結果についての情報発信になります。
4Mについては以下の記事で詳細に解説しています。併せてご覧ください。
関連記事:4Mとは?分析方法や変更管理の目的とポイントを解説
認証取得する難易度は?
ISO9001を認証取得する難易度は、以下のデメリットを許容できるかが重要です。
- 管理者の負担が増加する
- 認証取得費用と維持費がかかる
それぞれ詳しく解説していきます。
管理者の負担が増加する
ISO認証取得には管理者が必要となり、通常勤務と兼務する場合は負担が増加する可能性があります。規格要求事項を理解し、必要なマニュアルを準備するには工数がかかり、一人で作成するのは困難です。
認証取得までの一定期間はQMS の専門部署を作り、短期間で集中して取り掛かる方法も選択肢の一つとなります。認証取得後は毎年の維持監査、3年後の更新審査が必要になりますが、審査の経験が増えれば監査流れや要領が掴めるので、通常業務と並行して対応が可能になるでしょう。
認証取得費用と維持費がかかる
ISO9001を認証取得するときの費用に加え、更新と維持にも費用が掛かります。ISO9001の有効期限は認証取得後3年間であり、3年ごとに更新審査が必要です。更新審査の他に1年ごとに維持審査が必要となり、毎年コストが掛かるデメリットがあります。企業の規模や従業員数によって異なりますが、費用の目安は以下の通りです。
- 認証取得時の費用:30万円〜100万円 (ISO9001認証登録料、文書審査料、実地審査料、審査員の諸費用など)
- 更新審査の費用(3年ごと):認証取得時の約8割
- 維持審査の費用(毎年):認証取得時の約6割〜7割
ISOの国際規格に詳しい人材の確保が難しく、自社だけでISO9001の認証取得が困難な場合はコンサルタントを利用する企業が多くあります。コンサルタントへ依頼する内容は大きく分けて2パターンあり、それぞれ費用が異なります。
- ISO9001規格の研修・座学に参加する場合:数万円/1人
- ISO9001取得認証まで全て依頼する場合:100万円後半〜200万円前半
コストが掛かることはデメリットですが、ISO9001に認証した企業となれば新規顧客の獲得や消費者からの信頼度・顧客満足度の向上が期待できるので、費用対効果を確認しましょう。
まとめ
本記事ではISO9001の内容や認証取得する流れ、認証取得するメリット・デメリットを解説しました。ISO9001の認証取得には、PDCAサイクルとプロセスアプローチの考え方が重要です。
ISO9001を認証取得すれば顧客の信頼度や満足度の向上に繋がり、今後の売り上げ増加が期待できます。管理負荷の増加やコストがかかるデメリットを理解した上で、ISO9001の認証取得を検討しましょう。