・KY活動(危険予知活動)の必要性や目的を理解したい
・KY活動(危険予知活動)の具体的な進め方や事例を知りたい
KY活動(危険予知活動)の必要性や具体的な進め方に、頭を悩まされている方は多いのではないでしょうか?
KY活動は、事前に危険を予測し予防措置を講じて、労働災害やトラブルを未然に防ぐ活動です。従業員の安全と健康を守るために非常に重要な活動であり、従業員がKY活動に参加することで自身の安全意識の向上に繋がります。
本記事では、KY活動の目的や具体的な進め方について解説していきます。また活動内容の事例や記録方法についても紹介していきますので、ぜひ自社のKY活動に活かしてください。
また、KY活動や4ラウンド法の進め方について、元労働基準監督署署長の村木 宏吉氏が解説する動画も無料でご覧いただけますので、以下より併せてご覧ください。
KY活動(危険予知活動)について
KY活動とは何か、目的と効果について解説していきます。
KY活動とは?
KY活動とは「危険予知活動」の略称で、事故や災害の危険を未然に防ぐために、事業者や従業員が協力して実施する活動です。現場内で危険が潜んでいる場所や作業を洗い出し、事前にリスクの排除が重要な課題です。
また、リスクの抽出から対策を講じるプロセスを構築し、KY活動推進に必要な手法を取得するためのトレーニングをKYT(危険予知訓練)と呼んでいます。
例えば、職場内で実施されている行動目標や指差し呼称などがリスクに対する施策の一つです。従業員一人ひとりの安全に対する意識が向上すれば、事故や災害が発生するリスクの発見が早まります。
関連記事:KYT(危険予知訓練)とは?取り組む4つの目的や方法、業界別の例題を解説!
現場改善ラボでは、KYTの基本と実践法について専門家が解説する動画を無料で公開しているので、併せてご覧くださいませ。
行う目的と効果
KY活動を行う目的は、労働災害やトラブルを未然に防ぐことにあります。
厚生労働省の調査で、各業種において例年休業4日以上の死傷災害の要因の9割以上が、ポカミスやうっかりミスなどの不安全な行動と認められています。これらは人間特性によるミスや教育訓練不足、ルール不遵守などが原因です。
KY活動によるリスクアセスメントで職場の安全意識を高めれば、従業員がより安心して働ける職場づくりを実現できます。
また、現場の改善提案の場として活用すれば、従業員が主体的に動くので自己啓発の機会を得られ、企業全体の安全意識の向上に繋がり、生産性や社員満足度の向上が期待できるでしょう。
関連記事:製造業でポカミスが起きる原因は?対策の4つの流れを解説
KY活動の進め方
この章では、以下のKY活動について具体的な進め方を解説していきます。
・4ラウンド法
・1人KY
それぞれ詳しく見ていきましょう。
より具体的な内容を把握したい方は、無料でご覧いただける元労働基準監督署署長の村木 宏吉氏による解説動画を以下よりご覧ください。
4ラウンド法
4ラウンド法とは、複数の班に分かれて危険予知トレーニングをする手法です。
イラストシートを用いて複数人で職場や業務に潜む危険やリスクを抽出して、対策を講じていきます。4ラウンド法の概要と進め方は以下の通りです。
ラウンド | 項目 | 危険予知トレーニングのポイント |
1ラウンド | 現状把握 | 「どんな危険が潜んでいるか」議論する |
2ラウンド | 本質追及 | 「これが危険のポイントだ」と問題の本質を捉える |
3ラウンド | 対策樹立 | 「あなたならどうする」の思考で対策を検討する |
4ラウンド | 目標設定 | 「私たちはこうするという」の視点で行動目標を立てる |
以下では進め方を解説しますが、元労働基準監督署署長の村木 宏吉氏が4ラウンド法の取り組み方を解説する動画と併せてご覧いただくとより分かりやすいので、ぜひこちらもご活用ください。
準備・役割分担
はじめに必要な資機材の準備やKY活動を進める役割を分担していきます。効率良く議論を進めるために1チームは5〜6名に設定し、7名以上の場合は分割して進めることがポイントです。
- テーマ決め:現場作業、日常の行動、交通事故などからテーマを決める
- チーム編成:1チーム5〜6名に設定
- 準備するもの:イラストシート、模造紙、マジックインキ(黒・赤など2色)
- 役割分担:リーダー(司会)、書記、レポート係、発表者、コメント係を決める
イラストシートを用いればテーマが明確になり、チームメンバー全員の目がイラストや設備に集中できる効果が期待できます。イラストシートの代わりに写真を用いることも可能ですが、5Sが徹底されていなかったり、不要なものが映り込んでいると話が発散してしまう懸念があるので、問題点が明確になるような写真を選びましょう。
第1ラウンド:現状把握
第1ラウンドは”どんな危険が潜んでいるか”を踏まえて以下の手順で現状を把握していきます。
- リーダーは、どんな危険が潜んでいるか”メンバーに問いかける
- メンバー全員で、イラストシートを見ながら気づいた危険やリスクを発言する
- 書記は発言を模造紙にまとめる
- 5〜7項目を目標に危険やリスクを洗い出す
- 洗い出した内容を議論して加筆や修正を行う
危険やリスクを洗い出す7つの考え方と表現の仕方は以下の通りです。
危険やリスクを洗い出す7つの考え方 | 表現の仕方 |
イラストの中の作業者になりきる | ・自分が作業しているつもりでシートを見る |
危険を“危険要因”と“現象”で表現する | ・「〜なので」「〜して〜になる」「〜なので〜して〜する」などで表現する |
“現象”は“事故の型”で言い切る | ・落ちる、頭をぶつける、挟まれる、手を切る、腰を痛めるなど、言い切る・「〜かもしれない」「〜の危険がある」「〜の恐れがある」などの曖昧な表現は不要・事故の結果「ケガ」「死亡」などの発言は不要 |
“危険要因”はできるだけ “不安全な行動”と“不安全な状態”の組合せで表現する | 例:電球を片手で持ちながら脚立を降りたので、バランスを崩してステップを踏み外して落ちた |
“危険要因”を掘り下げていく | ・危険要因に対して「なぜ?」を繰り返し掘り下げる |
“危険要因”は具体的に表現する | ・「中腰で持っているので〜」「手を離しているので〜」など具体的に表現する |
“危険要因”は肯定的に表現する | ・対策を思い浮かべた「〜していないので」などの否定的な表現は避ける否定的な表現例:「安全ベルトをしていないので〜」「保護具を着用していないので〜」など肯定的な表現例:「身を乗り出しているので〜」「顔を近づけているので〜」など |
第2ラウンド:本質追及
第2ラウンドは”これが危険のポイントだ”の考え方で本質を追及します。
- リーダーは、第1ラウンドで出された危険の中で、「重要な危険ポイント」は何か問いかける
- メンバー同士で議論して項目を1〜2個に絞り、「重要な危険ポイント」に○印を付ける
- 「重要な危険ポイント」を指差し呼称で確認する
・リーダー:「危険なポイント!〜なので〜して〜になる、ヨシ!」
・全員:「〜なので〜して〜になるヨシ!」
第3ラウンド:対策樹立
第3ラウンドの対策樹立では、「危険なポイント」の解決策を議論していきます。
- リーダーは「危険なポイント」について対策は何か問いかける
- メンバーは「危険なポイント」について、”あなたならどうする”という目線で話し合う
- 解決するには何をすべきか、3項目を目標に具体的な対策を検討する
第4ラウンド:目標設定
最後に第4ラウンドで目標を設定します。
- 第3ラウンドで検討した対策の中から「重点実施項目」を絞りこんで、印とアンダーラインをつける
- 「重点実施項目」を実践するために、「チーム行動目標」を設定する
- 「チーム行動目標」を指差し呼称して確認する
・リーダー:「チーム行動目標!~する時は、~をして~しよう、ヨシ!」
・メンバー:「~する時は~を~して ~しよう、ヨシ !」
【引用:厚生労働省『KY活動』】
1人KY
1人KYを実施する目的と得られる効果を解説し、具体的な進め方と注意点を説明していきます。
1人KYの目的と効果
1人KYとは、従業員1人1人が危険個所を洗い出し、改善策を提案する方法です。従業員が自分の職場での危険個所を見つけ改善策を考えることで、職場全体で安全意識の向上が期待できます。
例えば、工場での1人KYの取り組みとして、現場で使用する設備について危険やリスクを抽出します。普段とは異なる目線で設備を見ることで、作業中に気づかない危険箇所やリスクを抽出し、未然に事故やトラブルを未然に防ぐことが可能です。また、オフィスでの1人KYでは、従業員が自分のデスク周りの危険物をチェックし改善策を提案すれば、オフィス全体の安全性も高まります。
さらに、1人KYの取り組みは、「自分の身は自分で守る」と強く意識する機会となり、従業員のやる気やモチベーションの向上にも寄与します。
従業員が自分自身の職場環境を改善すれば、自分の仕事に対する責任感や自信が生まれ、職場での成果にも繋がるでしょう。

1人KYの進め方と注意点
1人KYの進め方と自問自答シートを用いて行う方法、注意点について解説していきます。
〈基本的な進め方〉
従業員個人が危険を見つけ、改善策を考えていきます。
- 1人が現場を見回る
- 1人が現場を見回し、危険や問題点をリストアップします。
- 改善策を考える
- 見つけた危険や問題点について、改善策を考えます。
- 改善策を実行する
- 改善策を実行し、危険を未然に防ぎます。
〈注意点〉
1人KYは、現場に詳しい従業員が1人で行うことが多く、ラウンド法に比べて発見した危険が細かく詳細になることが特徴です。
ただし、複数の従業員で行うラウンド法に比べて、初心者目線でのリスクを見逃しやすくなります。1人KYでも定期的に結果をチームで共有し、抜け漏れがないように工夫して取り組みましょう。
活動内容の例
この章では厚生労働省が紹介しているイラストシートを用いた4ラウンド法の事例を見ていきましょう。

現状把握:どんな危険が潜んでいるか話し合う(第1ラウンド)
第1ラウンドで、どんな危険が潜んでいるか話し合いした結果を模造紙に記入した事例は以下になります。
〈模造紙への記入例〉
- 力を入れて汚れをもみ洗いしたので、はねた水が目に入る
- 脚立から離れた窓を拭こうと身を乗り出したので、脚立がぐらついてよろけて落ちる
- 脚立から飛び降りて、着地した時によろけて足をひねる
- 昇りながら窓に近づこうと窓際に足を寄せたので、濡れた脚立で滑り転落する
- 脚立から降りて、拭き具合を見ながら後ずさりしたので、脚立のそばのバケツに足をひっかけ転ぶ
本質追及:これが危険のポイントだ(第2ラウンド)
第2ラウンドでは第1ラウンドで発見した危険の中で、これが重要だと思われる危険に◯を付けます。さらに絞り込み、◎とアンダーラインを付け「危険のポイント」を決定し、指差し唱和で確認することが重要です。
〈模造紙への記入例〉
- 力を入れて汚れをもみ洗いしたので、はねた水が目に入る
- ◎:脚立から離れた窓を拭こうと身を乗り出したので、脚立がぐらついてよろけて落ちる
- ◯:脚立から飛び降りて、着地した時によろけて足をひねる
- 昇りながら窓に近づこうと窓際に足を寄せたので、濡れた脚立で滑り転落する
- ◯:脚立から降りて、拭き具合を見ながら後ずさりしたので、脚立のそばのバケツに足をひっかけ転ぶ
対策樹立:あなたならどうする(第3ラウンド)
第3ラウンドでは、「危険ポイント」に対して話し合いで対策を出し合うフェーズです。「危険ポイント」を解決するために必要な具体的な対策を立案していきます。
- 脚立を正面に置く
- 脚立の反対側に昇る
- 脚立をこまめに動かす
目標設定:私たちはこうする(第4ラウンド)
第4ラウンドは、第3ラウンドで議論した対策の中から質の高い項目に※印とアンダーラインを付けて、「重点実践項目」を決定します。「チーム行動目標」を決定し、唱和して確認する流れです。
- 脚立を正面に置く
- 脚立の反対側に昇る
- ※:脚立をこまめに動かす
〈チーム行動目標〉
脚立を使って窓拭きする時は、脚立をこまめに動かして行おう ヨシ!
【引用:厚生労働省『KY活動』】
活動記録を残す
KY活動の記録は、職場内の安全管理を向上させるために必要不可欠な活動です。KY活動の記録には、活動内容や結果の詳細を報告書や議事録に記録すれば、今後の改善策のために必要な情報を提供できます。
活動記録の内容は以下の内容を含めましょう。
- 実施日
- リーダー名
- 実施メンバーの名前
- 実施内容
- 危険ポイント
- 私たちはこうします
- チーム行動目標
模造紙に書き込みしながら記録を残す方法が一般的ですが、GoogleドキュメントやExcelファイルを利用すれば、簡単に記録を保存し共有できるので、有効な手段の一つです。
成功したポイントや失敗した点を振り返れば、今後の活動の質を高め、成果に繋がりやすくなります。今後の改善に役立つだけではなく、内部監査や法定監査においても証拠資料として活用できますので、しっかりと記録を残していきましょう。
まとめ
本記事では、KY活動の目的を具体的な進め方、活動内容の事例や記録方法について解説しました。
KY活動は、職場における危険を未然に防止するための活動です。4ラウンド法や1人KYで危険やリスクを抽出し、対策を講じることで安全管理の向上が期待できます。
また活動の記録を残すことで、今後の活動の改善や戦略の見直しに役立ち、内部監査や法定監査でKY活動のエビデンスとして提出できるので、忘れずに記録を残しましょう。