業務の進行や情報が特定の個人に依存している状態を属人化と呼びます。

この記事を読んでいる方は、
「業務の属人化を解消する方法を知りたい!」
「属人化によるデメリットを知りたい!」
「具体的に属人化を解消するツールはあるの?」
などの悩みを抱えているのではないでしょうか。

そこでこの記事では属人化の概要や原因とデメリット、そして解消方法について詳しく解説します。さらに具体的な解消事例としてマニュアルの導入やITの活用方法を紹介します。

属人化は業務効率の低下や品質の低下、担当者不在時の業務停滞のリスク、適正な評価が行えないといったデメリットをもたらすため危険です。そんな危険な問題である属人化をこの記事を通して解決します。

現場改善ラボでは、「設備保全の属人化」に焦点をあてた設備管理コンサルタントの清岡 大輔氏が解説する動画も公開中です。ぜひ本記事と併せてご覧ください。

設備保全の属人化、どう防ぐ?属人化を解消する3つの秘訣

属人化とは

属人化とは、特定の業務手順や状況が作業担当者しか把握できておらず、情報が周囲に共有されていない状態のことです。属人化していることで仮に担当者が不在になった場合、業務が停滞する可能性があります。

例えば、製造現場でライン作業を1人しか習熟していなかったとしましょう。その1人が休めばライン作業をする人がおらず生産停止するしかありません。

属人化の対義語は業務の標準化です。業務の標準化は、誰でも一定の品質を保ちながら業務を遂行できる状態のことで、業務を標準化をすれば同じ品質で製品やサービスを提供することが可能になります。そのため、多くの企業が属人化の解消を目指してITやデジタル技術を駆使した業務の標準化を進めています。

属人化とスペシャリストの違い

属人化と似ている言葉が「スペシャリスト」です。スペシャリストとは特定の業務において優れた専門性を持つ人物を示します。
特定業務に特化しているという点で属人化とスペシャリストは似たような言葉に見えますが、優れた専門性を前提としているかどうかで異なります。

具体的には、製造現場で専門性が高い作業に習熟している人が1人しかおらず、その人しか作業ができない状態は属人化の典型的な例だといえます。一方で、専門性が高い作業を熟知しており他の社員に教育することもでき、難度の高い問題を自ら調査・解決できたりするような人材はスペシャリストに相当します。

属人化の原因

属人化の原因としては主に3つが考えられます。

  • 業務過多で仕事が忙しい
  • 情報共有のシステムがつくられていない
  • 個人成果主義

業務過多で仕事が忙しい

業務過多であると個々の業務に対する理解やスキルの共有に必要な時間が確保できないため、属人化の原因となります。

例えば、製造ラインの作業が過密スケジュールで進行している場合、作業者は自分の業務をこなすことに専念し、他のメンバーとの情報共有やノウハウの伝達が後回しになりがちです。後回しになった結果、業務の属人化が進行する可能性があります。

情報共有のシステムがつくられていない

情報共有のシステムがない場合、個々の業務に関する重要な情報やノウハウが担当者にとどまることもあります。情報やノウハウを共有するシステムが作られていない場合には、従業員が情報やノウハウを活用することが難しいため属人化の原因となります。

例えば、製造工程のマニュアルなどを共有するシステムがなければ、一部の担当者しか工程内容を把握していないため、属人化が進行します。

個人成果主義

個人成果主義のもとでは個々の成果を追求する傾向が強まり、組織全体としての協調性や情報共有がおろそかになりがちであるため、属人化の原因となります。

例えば、個々の成果が評価されるシステムでは自分の業務を他人に教えることで自分の価値が下がると感じる可能性があります。結果として業務の属人化を助長し、組織全体の成長や進化を阻害する可能性があるため注意が必要です。

属人化のデメリット

属人化のデメリットとして挙げられるのは4つです。

  • 業務効率の低下
  • 品質の低下
  • 担当者不在時の業務停滞リスク
  • 適正な評価が行えない

業務効率の低下

属人化は特定の従業員だけが業務を担当することで、他の従業員がその業務を理解して実行する能力が育たないことにより、業務効率の低下というデメリットを引き起こします。

例えば、製造ラインの工程を1人の従業員だけが担当していると他の業務へ対応することができません。また、他の従業員が業務を引き継ぐこともできないため業務効率が低下する可能性があります。

品質の低下

属人化は特定の業務を担当する従業員の技術や知識を他の従業員に引き継ぎできていないため、その業務の品質が一定に保てないというデメリットを引き起こします。

例えば、製品の最終検査を特定の従業員が行っているとして休んだ場合に、他の従業員が同じレベルの検査能力をもっていないため、製品の品質は保証できません。

担当者不在時の業務停滞リスク

属人化は特定の業務を担当する従業員が休んだり退職する場合、その業務を遂行できる人がいないため担当者の不在時に業務が停滞するリスクを高めます。

例えば、製造業では特定の機械操作を1人の従業員だけが知っている場合、その従業員が休むと誰も機械操作ができず生産が停止する可能性があります。

適正な評価が行えない

属人化が進行すれば従業員を適正に評価することは難しいです。なぜなら、特定の業務を担当する従業員の業績を他の従業員と比較する基準がないからです。

例えば、特定の業務を1人の従業員が独占している場合、その業務効率や品質を他の従業員と比較することはできません。評価の公平性を損ない従業員のモチベーションを下げる可能性があるため注意しましょう。

わざと属人化することでメリットのある業務

実は属人化することによってメリットのある業務も存在します。例として、下記に該当する業務は属人化によるメリットが大きいといえます。

  • 正しい手順がまだ定まっていない業務
  • 作業内容が毎回変わる業務
  • 専門性が高い業務

正しい手順がまだ定まっていない業務

新しい業務や試行錯誤が必要な業務ではひとりの専門家がその業務を担当し、最適な手順を見つけ出すことが求められます。

例えば、新製品の開発や新しい生産ラインの立ち上げなど、まだ正しい手順が確立されていない業務ではその業務を担当する従業員が知識と経験を活かして最適な手順を見つけ出すことが多いでしょう。

正しい手順がまだ定まっていない業務は、1人に業務を集中させることで知識と経験を活かせるため属人化するべき業務といえます。

ただし、業務がある程度のかたちになり正しい手順が整ってきたところでマニュアルを作成し標準化することが大切です。

作業内容が毎回変わる業務

作業内容が毎回変わる業務は、属人化すべきだといえるでしょう。

例えば、オーダーメイド製品のように顧客からの要望によって作業工程が変わる場合は、業務を担当する従業員が経験と知識を活かして適切に対応することが重要です。

特定の人に業務が集中することで従業員が経験を積み重ね、より高品質なサービスを提供することが可能になります。

専門性が極めて高い業務

専門性が非常に高い業務では、担当する従業員が深い知識と経験をもっていることが求められます。

例えば、特定の機械操作に関わる免許や特殊な資格を必要とする業務では、担当する従業員が専門的な知識と技術をもっていることが重要です。
このような業務を行う場合、資格やスキルを持っていない従業員が介入することを防ぐためにも、ある程度業務が属人化されていることが好ましいケースがあります。

属人化の解消方法

属人化の解消方法として挙げられるのは4つです。

  • 業務フローの可視化
  • マニュアルの作成
  • PDCAサイクルを回す
  • 業務標準化

業務フローの可視化

業務フローが明確になることで誰でも業務を理解し、実行できるようになるため、業務フローの可視化は属人化の解消に有効といえます。

製造現場では特定の機械操作方法や製品の組み立て手順など、特定の従業員しか知らないことがしばしばあります。そこで業務フローを可視化し、全員が理解できるようにすることで誰でもその業務を遂行できるようになります。

結果として、特定の人が休んだ場合でも業務が滞ることも減るだけでなく、業務フローの可視化は業務の無駄を見つけ出すことにも有効なのでおすすめの方法です。

マニュアルの作成

マニュアルがあることで業務の手順が明確になるため、属人化解消という意味では有効な手段です。

製造現場では新製品の製造方法や新しい機械の操作方法など、新しい知識や技術が求められます。そこで知識や技術をマニュアル化することで、新たにその業務を担当する従業員でもスムーズに業務を行えます。

マニュアル作成の方法についてはこちらの記事で紹介しています。

PDCAサイクルを回す

この記事を読んでいる方が勤めている現場では、製品の品質向上や生産効率の向上など常に改善が求められているでしょう。

業務フローやマニュアルが完成しても終わりではなく、運用して不足点や改善点があれば都度修正することが重要です。

PDCAサイクルで現場の業務フローやマニュアルを見直し、現場全体で情報共有を進めれば誰もが業務を知ることができ、属人化を防げるでしょう。

業務標準化

作業を業務標準化することで属人化を解消することができます。

作業のやり方を統一することにより未習熟者の理解が早く進み、マニュアル化されていればよりいいでしょう。また、属人化解消だけではなく品質も一定に保たれ複数のメリットがあるといえます。

現場改善ラボでは、業務標準化を進めるための具体的な手法や継続的な取り組みが実現するための従業員に対する意識共有/参加を促すポイントをクレインテクノコンサルティング門眞 博行 氏をお招きし、解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

脱”我流化”!作業のバラつきを防ぐ『業務標準化のカギ』

属人化の解消に有効なツールと企業事例

属人化の解消に有効なツールは多様にありますが、その中でもおすすめなツールと、そのツールを導入した企業事例を紹介します。

属人化の解消にはtebikiの動画マニュアルがおすすめ

そもそも動画マニュアルとは、作業手順や安全指導、異常処置などを動画で視覚的に示す教材のことです。

紙のマニュアルや口頭での指導に比べ、動画は直感的に理解しやすく、多言語対応も容易です。

動画マニュアルは、紙では伝わりにくい「業務の動き」を分かりやすく伝えることができるため、従業員は作業手順を迅速かつ正確に理解することができます。動画マニュアルを導入された企業からはOJTが半分になったという声や、8割動画に置き換わったという声を耳にします。

動画マニュアルでおすすめなのが、tebikiのサービスになります。

tebikiの動画マニュアルでは、伝わりにくい”カン・コツ”を可視化し、データ蓄積することでOJTの効率化や業務標準化、技術伝承を推進させます。また、スマホで撮影するだけで誰でも簡単に動画マニュアルを作成でき、外国人スタッフには自動翻訳100カ国以上の言語に対応しています。

属人化の解消事例

動画マニュアルtebikiを導入した企業の事例として、次の2社を紹介します。

  • 株式会社ハングリータイガーの事例
  • サッポログループ物流株式会社の事例

株式会社ハングリータイガーの事例

株式会社ハングリータイガーは、横浜市を中心にオリジナルハンバーグとステーキの専門店を12店舗展開しているチェーンレストランです。株式会社ハングリータイガーの課題は、紙マニュアルでは業務が伝わりにくく、新人教育のためのOJTが非効率的であったことでした。また、マニュアル作成や更新業務が特定の担当者に集中し、属人化していることが浮き彫りになりました。

そこで株式会社ハングリータイガーは、動画マニュアル作成共有ツールtebikiを導入しました。tebikiを導入したことにより、誰でも簡単に動画マニュアルを作成できるようになりました。

結果として、誰でもわかりやすいマニュアルを作成することができ、属人化解消につながりました。

株式会社ハングリータイガーの事例は、動画マニュアルの導入によって属人化を解消し、教育の質と効率を向上させた成功例といえます。

株式会社ハングリータイガーの詳細の事例については次の記事で紹介しています。

サッポログループ物流株式会社の事例

サッポログループ物流株式会社もtebikiを導入し、属人化を解消した企業です。

物流業務は「動きが伴う」業務が多く、文字情報だけでは効率的な技術伝承が困難だったため、サッポログループ物流株式会社は、動画マニュアルツールtebikiを導入しました。動画マニュアルの導入により、業務内容やノウハウを可視化し、共有することで、業務の属人化を解消し、業務の標準化や技術伝承を実施することが可能となりました。

具体的な効果としてはマニュアルの作成工数が大幅に削減され、OJTの時間も短縮しました。結果として、教育のコスト削減が実現し、月額30万円のコストダウンに成功したといいます。また、動画マニュアルはOJTの代わりとして活用され、現場で業務手順を確認したい場合にQRコードからすぐに確認できるようになりました。

サッポログループ物流株式会社の事例については次の記事で解説しています。

tebikiで業務標準化し属人化を解消しよう!【まとめ】

属人化とは、特定の個人が特定の業務を担当し、その業務知識やスキルがその個人に依存してしまう状態のことです。似たような言葉にスペシャリストとあります。スペシャリストとは特定の業務において優れた専門性を持つ人物を示すことでした。

属人化にはデメリットが多く、業務効率の低下、品質の低下、担当者不在時の業務停滞のリスク、適正な評価が行えないといった問題があります。一方で、正しい手順がまだ定まっていない業務や、作業内容が毎回変わる業務、専門性が高い業務など、一部の業務では属人化がメリットとなる場合もあります。

しかし、属人化は現場にとっては解消するべき場面が多いことが実情です。

そこで、属人化の解消事例として、株式会社ハングリータイガーとサッポログループ物流株式会社の事例を紹介しました。2社ともに、業務の可視化と情報共有を通じて属人化の解消を実現しています。

属人化は現場改善の大きな課題であり、属人化の解消は組織全体の生産性向上に関係してきます。属人化が起こっている原因を理解し解消して、よりよい現場作りをしていきましょう。

3分で分かる「tebikiサービス資料」