製造現場における課題や問題点を改善する手法として「QC7つ道具」というものがあります。製造現場での困りごとは、現場で働く方たちの大きな懸念材料で解決したいものの、なかなかうまくいかない場合が多いと思います。

そんな現場改善に役立つ品質管理手法として、「QC7つ道具」が挙げられます。本記事ではQC7つ道具の用語の意味から、実際の製造業務に当てはめて解説いたします。

QC7つ道具とは?

QC7つ道具の「QC」からまずは解説しなくてはいけません。QCとは「Quality Control(品質管理)」の頭文字を取って表しています。

品質管理とは、製造現場で作られている製品の特性を定量的に管理し、顧客の図面に対して異常がないかを監視するシステムです。異常が発生すれば、製品作り直しの無駄や時間ロスに繋がり、生産計画に遅延が起きてしまい、引いては顧客の信頼を損ねる可能性があります。

そのためにQC7つ道具を使い、品質問題、生産効率などの課題を解決に導く改善手法が必要になります。QC7つ道具の名前の由来は諸説ありますが、弁慶の7つ道具になぞられて名づけられたと言われています。

QC7つ道具は以下の7つです。ここからは1つずつ、詳細に解説していきます。

  • パレート図
  • 特性要因図
  • グラフ
  • ヒストグラム
  • 散布図
  • 管理図
  • チェックシート

パレート図について

パレート図

パレート図は、現場の問題点を数値データでグラフ化し、優先順位を決めるときに使用します。製造現場の改善を進めるにあたって、手当たり次第に改善をしようとしても場当たり的な改善となり、信ぴょう性や継続性に欠けたりすることが考えられます。

パレート図は改善の優先順位を決めるだけでなく、改善の方向性を正確に定義づける方法でもあります。まずはパレート図を使って、実際に起きている問題点を「現状把握」することが重要です。

パレート図の使用例

パレート図の使用例を、事例に当てはめて解説します。おもちゃの内臓部品を組み立てる製造ラインで、組付け不良が多数発生し、生産効率や次工程への納期が著しく低下している状況があります。

製造現場の課題として挙がっている組付け不良の改善策を考えるときに、まずは「どのように組付け不良が発生するのか?」の発生事象を挙げることが重要です。一日で起きる組付け不良の内容は以下の通りです。

一日で起きる組付け不良の内容例

  • ねじ溝をなめてしまう(潰してしまう)
  • ねじ間違い
  • 組付け方向を間違える
  • ねじ未取り付け

この4つの不良原因が生産性を阻害する要因であれば、「どの事象がどれだけ発生しているか」を検証しましょう。検証した結果、一日でこれほどの不良が発生していたとします。

一日で起きる組付け不良の発生数

  • ねじ溝をなめてしまう(潰してしまう):3件
  • ねじ間違い:1件
  • 組付け方向を間違える:7件
  • ねじ未取り付け:1件

組付け方法を間違える事象が一番多く、次にねじ溝をなめてしまう事象が入ります。これをパレート図で表すと、上位2事象で占有率が83.3%となります。

この2事象を改善すれば、不良発生件数を83.3%削減できることになるので、優先的に改善を進めていく必要があると考えられます。

パレート図を使って「一番困っている事象を解き明かし、改善に着手する」ことを、初めの一歩を踏み出すための手法と考えてください。

特性要因図について

特性要因図

特性要因図は、発生した事象に対しての要因を探る手法です。発生事象には必ず原因がどこかにあるため、その原因につながる要因を関連性から洗い出し、原因究明をします。

発生した事象(特性)を魚の頭になる部分に掲げ、発生事象に関連したあらゆる面からの要因を洗い出していきます。

特性要因図の使用例

ここからは、特性要因図の使用例を事例に当てはめて解説します。

アルミダイキャスト製品をマシニングセンターで、加工する工程で「穴未加工の行程飛び」を起こして不良が多発していたとします。この事例を特性要因図に当てはると、魚の頭の部分には「未加工が発生した」が入ります。 骨になる部分には、あらゆる面からの要因を想定する必要があるので、製造業の基本である「4M変化点」を大骨子に掲げます。

4M変化点とは?

文字通り、4つのMの頭文字を取り、4M変化点と呼んでいます。4Mは「Method:方法」「Material:材料」「Machine:機械・設備」「Man:人」となります。製造業では「4M変化点あるところに不良要因がある」とも言われており、この基本の4項目の詳細を調査することで、事象の原因を特定することができます。

「方法」に関するの要因

方法の要因には「製品を加工する際の作業方法が確立されているか」「作業方法を記した手順書やマニュアルがあるか」といったものが挙げられます。

この場合、暫定工程や試作工程で手順があいまいといったことや、内容が網羅されている手順書がない、工程変更後にマニュアルが更新されていないといったことが考えられます。

「材料」に関する要因

材料の要因には「品質のバラつきが発生している」「在庫を抱えすぎ」といったものが挙げられます。

この場合、調達先で品質管理上の問題が発生しているといったことや、自社内の生産管理に課題があるといったことが考えられるため、その部分で品質改善のヒントがあるといえます。

「機械・設備」に関する要因

機会・設備の要因には「加工治具に製品をセットする際にコツがいる」「加工ポートが多く、作業者が迷う」といったものが挙げられます。

この場合、コツや注意点が求められることによる、安定的な製品に影響が出ることが考えられます。

「人」に関する要因

人の要因には、「ベテランや新人による作業差」「人の入れ替わりが激しい現場」といったものが挙げられます。

この場合、作業者の習熟度による影響や、現場の作業標準化ができていないといったことが考えられます。

それぞれに出された要因について、作業日報やチェックシート、生産履歴などを調べて細かい小骨子を記入しましょう。記入していくうちに現状把握が進み、要因の絞り込みができてくるはずです。手順書・マニュアルの有無、加工治具の複雑さが「未加工」「行程飛び」の主な要因ではないかと特性要因図からは読み取れることができます。

このようにあらゆる面から要因を出す特性要因図は、不良の原因を探し出す重要な手法であると言えます。

グラフについて

グラフについて

グラフはパレート図と同様に、数値データを分かりやすく見るための手法です。棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなど、表現したい内容により使い分けます。

数値を見える化することで現状把握をして、問題点の解決を促進する役割を果たします。製造現場にはあらゆる数値データが蓄積されています。生産数、稼働率、不良数、不良率など、たくさんのデータがあるにも関わらず、その数値が「何の目的でとられているか」がわからなくなっていることがあります。

そんな数値データですが、パソコンの中にある数値の羅列を見ても、何を示しているかはわからないので、数値データを「見える化」することが問題解決の糸口になります。

グラフの使用例

グラフの使用例を、事例に当てはめて解説します。とある製造会社の品質管理課では、客先別の不良発生率を数値データで掲示してあるとします。

しかし、数値だけが掲示されているため、その数値が何を示しているのかが分かりづらく、課員もどのように不良を削減させてよいかよくわからずにいました。課員を「同じ方向へ向かせる」ためには、正確な情報を分かりやすく提供することが重要で、その情報を得た課員は、それぞれの役割を果たすようになります。

例えば、不良率を「棒グラフ」にして品質不良の発生率が特に高い3社を絞り込み、全課員で重点的に品質改善に取り組むようになりました。「円グラフ」では、要因別の不良発生率が掲示されて、担当している課員はその要因に特化した改善活動を始めるようになりました。

見えるということは「理解しやすくなるということ」です。わからなかったものが理解できて仕事もスムーズにいくことが期待できます。このことが生産効率改善や不良削減につながっていくことになるでしょう。

ヒストグラムについて

ヒストグラム

ヒストグラムは、一定数のデータを区切り、棒グラフで表したもので、別名「度数分布表」とも呼ばれています。確認したい数値のばらつきやピークがどこにあるかを、グラフで表現できるので寸法管理や機械の設定値管理にも使われます。

顧客の図面で幾何公差の厳しいところは精度管理も重要になるので、この管理方法が有効であると考えられています。

ヒストグラムの使用例

ヒストグラムの使用例を、事例に当てはめて解説します。

ステンレスの形状物をCNC旋盤で加工する会社で、製品の「幾何公差」(寸法の上限と下弦の幅が狭く、精密な加工精度の要求がある箇所)が「±0.05」しかなく、加工工程では「歩留まり」(生産数から不良数を引いて実際に良品となった数量)が悪く、何が原因かよくわからないで生産を続けていました。

ここでヒストグラムを使用し、一定期間測定したデータを表にすると、幾何公差の中央値からどの程度ばらつきがあるかが「見える化」できます。グラフの山の形状が中央からずれている、山の形が凸凹しているなどの傾向が見て取れます。傾向さえつかめば、どこに問題点があるかを明らかにすることができます。

ヒストグラムで寸法値のばらつきとグラフの形状に凸凹が多く確認されたので、特性要因図で要因分析し、4M変化点を検証したら「材料」に問題があり、2社購買の1社から購入したステンレス鋼が粗悪な材料で、こちらの素材を使ったときに歩留まりが悪くなることがわかりました。

生産に集中して品質管理をおろそかにすると、大きなダメージを受けるため、生産と品質管理のバランスをよく考える必要があります。傾向管理は幾何公差の厳しい製品には重要な品質管理方法といえます。

散布図について

散布図について

散布図は2つの事象の相関(関係性を表す内容)を表すグラフです。データが拡散しているのか、正方向、負方向で集まっているのかによって、2つの事象に相関があるのか、まったく関連性がないのかの因果関係を測定することが目的で使われます。

散布図の使用例

散布図の使用例を、事例に当てはめて解説します。

アルミダイキャスト製品の鋳抜き穴へ、転造タップで加工する際の下穴径と、転造タップの刃物の寿命を散布図で計測したとします。下穴径は下限から上限へとそれぞれ5種類を10,000個用意し、転造タップで加工しその数値をプロットしています。下穴径には公差があり、鋳造時にピン摩耗も考えて下限に設定されています。

下穴径が規格の下限であると、理論上、転造タップには負荷がかかることになり、転造タップの寿命は短くなると考えられるのが普通です。しかし、転造タップは想像よりもはるかに長持ちし、下穴径との相関関係は見られなかったと結論付けました。

数値やデータはそのまま結果に出るので、信憑性があります。そのため、データをいかに活用するかが、品質管理のカギとなります。

管理図について

管理図について

管理図とは、X-R(エックスバーアール)管理図とも呼ばれる、ヒストグラムと同様に製品寸法の傾向管理に使われる品質管理方法です。寸法公差を上限、下限で線引きし、測定したデータがどの位置にいるかを見える化することで、安定して加工がされているのか、公差に対して上限方向なのか、下限方向なのかも一目でわかるようになります。

この手法は「工程能力」(製品品質の確からしさをデータで顧客に提示し、その製造方法を認知してもらう品質管理手法)を提示するうえでも重要な管理方法であり、幾何公差の厳しい製品にはなくてはならない品質管理方法です。

管理図の使用例

管理図の使用例を、事例に当てはめて解説します。

先ほどのステンレスの形状物のCNC旋盤加工で、幾何公差が±0.05なので、ばらつきがあれば寸法規格外がすぐに発生します。上限や下限に近いのであれば、中央値へ「補正」(機械加工をするときのプログラムを修正して加工の狙い値を中央付近にすること)して加工機の寸法を修正します。数値がジグザグ状態の場合は、寸法設定を疑うことはもちろん、加工治具の状態や素材の硬度などの要因も検証する必要があります。

結果として、加工治具に製品をセットしたときに若干の緩みが生じて、寸法のばらつきが出てしまうことがわかりました。

寸法のばらつきは製造現場では死活問題で、寸法規格外の大量発生や、それに伴う作り直し、手直しに余計な工数を費やさなくてはなりません。このような状況を起こさないためにも、しっかりと傾向管理をする必要があります。

チェックシート

チェックシート

チェックシートには、製品寸法を定量的に管理し、幾何公差に対して監視する役割があります。チェックする頻度は幾何公差の厳しさにより変わります。幾何公差の厳しい製品ほど、測定頻度を高くしないと数値がどこで暴れだすかがわからず、測定する間で寸法規格外が発生し、不良で歩留まりが悪くなってしまう場合もあります。

チェックシートの使用例

 チェックシートの使用例を、事例に当てはめて解説します。

今一度、ステンレスの形状物を例にとりましょう。寸法値の測定は一般的に「初・中・終」の三回が基本と言われており、CNC旋盤加工のステンレス製品も、三回の測定でチェックシートをつけていましたが、「中」で測定した後に素材が切れて別の材料を使う必要があり、素材切り替えを実施しました。

そのタイミングで作業者も変わり、チェックシートをつけずに製品加工を始めてしまったところ、加工した製品がすべて「寸法規格外」であることが「終」の測定で判明しました。

反省点として、チェックシートの「変化点があったときの対応方法」に問題があったと思われます。特性要因図のところでも触れましたが、変化点のあるところに不良発生の要因が隠れていると言われています。

人が変わった、材料が変わったなどは大きな変化点になりますので、その際にはチェックシートに記載されているタイミングでなくても、寸法測定をする必要があったのではないでしょうか。

従って、チェックシートの作り方も「変化点がある場合は頻度に関係なく測定すること」などの注記をするなどの対策が必要となります。

QC7つ道具の練習問題

練習問題

以下に上げる状況に対して、当てはまるQC7つ道具を考えてみてください。

1.筒状の鋳鉄素材を旋盤で加工するときに、設定した寸法に対して加工した製品が規格内に入っているかを監視する手法は何でしょうか?

答え                  

2.自動車部品の組付けラインで、誤って部品を取り付けてしまう事象が散発的に発生し、事象改善に着手するときのはじめの一歩として、改善したい事象の優先順位を決める手法は何でしょうか?

答え                   

3.炭素鋼の炭素量と、その素材を加工するときの切削抵抗との、2つの事象の相関関係を測定する手法は何でしょうか?

答え                  

4.マシニングセンターでアルミダイキャスト製品の面加工を行い、その寸法のばらつきやピーク値などの傾向管理をする手法は、何と何がありますか?

答え1                  

答え2                   

5.生産効率の安定しないプレスラインで、プレスショット時間や歩留まり率などの数値データを見える化して、生産効率改善へと導く手法は何でしょうか?

答え                   

6.プラスチック部品の検査工程で、「黒点」や「ひけ」などの不良品で「不良品見逃し」が頻発している状況で「なぜ、不良品見逃しが起きるか?」に対して、あらゆる面から要因を洗い出し原因を探し出す手法は何でしょうか?

答え                   

回答と解説

1.について

回答:「チェックシート」になります。

▼解説
旋盤で寸法に合わせて、一定で均一な加工を行っていますが、素材の違いや、機械精度のばらつきで寸法が変化することがありますので、その推移を「チェックシート」で監視する必要があります。

2.について

回答 :「パレート図」になります。

▼解説
自動車部品の組み立てラインで、誤った組付けが発生していることに対して「何に一番困っているか」を発生件数の多い順に「パレート図」でまとめて、上位事象から改善に着手する必要があります。

3.について

回答:「散布図」になります。

▼解説
炭素鋼の炭素量と切削抵抗、この2つの事象の相関が分かれば、素材の炭素量で加工段取りや寸法を補正する必要があるということがわかります。

4.について

回答:「ヒストグラム」と「管理図」になります。

▼解説
マシニングセンターでの加工は一定で均一に行っていますが、ダイキャスト素材の特性や治具の構造で「寸法の狙い値」をその都度設定をします。

狙い値がどこにあるか、どの程度のばらつきなのかを目視で分かりやすくするために「ヒストグラム」を使います。「管理図」は設定した狙い値が「どのように推移するか」の傾向をつかむために必要です。

5.について

回答:「グラフ」になります。

▼解説
プレスラインの生産効率を数値化しても「問題がありそうだ」程度にしか数字を見る限りわかりません。数値を目で見て状況を理解するための手法として「グラフ」が必要になります。

6.について

回答:「特性要因図」になります。

▼解説
プラスチック部品の検査工程で「検査見逃し」が発生している状況を、どのように改善するか4M変化点から「現状把握」して「検査見逃し」の原因を探る方法が「特性要因図」になります。

新QC7つ道具とは?

新QC7つ道具とは、収集した言語データ(部品の欠品が発生する、部門間の情報共有ができない、図面作成に時間がかかるなど)を、分かりやすく図や表に整理して品質改善に役立てる手法です。

ここまで解説してきたように、QC7つ道具は主に数値データを集めて整理している一方で、新QC7つ道具は言語データをS使っている点に違いがあります。

数値データを収集しにくく、言葉でしか表現できない問題点、ヒューマンエラーなどの人の感覚や感情の問題などを、見える化したり、複雑さを解き明かすために活用します。

手法は以下の7つがあります。

  • 親和図法
  • 連関図法
  • 系統図法
  • マトリックス図法
  • アローダイアグラム
  • PDPC法
  • マトリックスデータ解析法

新QC7つ道具については、別の記事でより詳細に解説しています。併せてご覧ください。

まとめ

ここまで、品質問題や生産効率などの課題を解決に導く改善手法として、QC7つ道具を解説してきました。ひとえに課題といっても、その根本的な原因や要因を把握することは簡単ではありません。

何か課題が起きた際の原因究明や、日々の品質管理の一環でQC7つ道具の手法を用いて確認していくことが効果的です。ぜひ本記事を参考に、この手法をご活用ください。