製造業で作業を効率的に進めるためには、一貫した作業手順の確立が必要です。作業手順が確立してることで、製品の品質向上や作業者の安全対策に役立ちます。しかし、何から始めれば良いかわからず、お困りの方も多いはず。また、手順書を作ったものの、現場での活用の仕方がわからず、うまく機能していないということもあるのではないでしょうか。
この記事では、SOPの意味について解説し、マニュアルとの違いやSOPを導入するメリット、作成から展開までの6ステップ、さらにSOP整備で失敗しない4つのコツについて解説します。さらに、SOP作成を従来の1/3に減らした効率的な方法/事例もご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
SOPについて知らない人でも、この記事を読めば作成手順から作成のコツまで熟知できるので、社内の手順をうまく整備できるようになるでしょう。
目次
SOP(標準作業手順書)とは?
SOPとは標準作業手順書のことです。ここではSOPの具体的な意味と整備することによる効果について解説します。
SOPの意味
SOPとは、Standard Operating Proceduresの略称で、日本語では標準作業手順書と訳される文書のことです。主に自動車などの製造業や医療の分野で活用されているツールで、守るべき作業手順が記された文書と表現できます。
自動車などの製造業では、手順が確立されていなければ、個々人が機械の整備方法などを別々の作業手順を行うことでポカミスが発生し、ヒューマンエラーにつながる可能性があります。
また医療分野では、手術や検査方法など守るべき医療の手順を守らなければ、人命に関わるミスにつながるでしょう。そのため、製造業や医療分野では作業手順を統一するために標準作業手順書が必要になるわけです。
そのほか、農業の分野でも農薬の利用方法の面で、SOPが必要になり、産業といえる分野では活用されているツールです。
具体例として製造業、医療業、農業の3つを取り上げましたが、基本的な方針は「作業手順の統一」で共通しています。ただし、製造業では「機械の操作手順、商品の製造方法」、医療業では「手術や検査方法など守るべき医療の手順」、農業では「農薬の利用方法」とそれぞれの産業で利用する目的が異なる点が特徴です。
関連記事:ヒューマンエラーはなぜ起きる?防ぐために必要な8つの対策
SOPを整備することによる効果
SOPを整備することで、以下の3つの効果があります。
- 業務プロセスの明確化
- 品質の向上
- 新人教育の効率化
業務プロセスの明確化
SOPを整備することにより、業務プロセスが明確になり、各ステップが正確に定義できます。なぜなら、SOPには業務プロセス全体が記載されており、各ステップにおける具体的な作業内容や手順が明確に定義されているからです。
従業員は、SOPに基づいて作業することで、業務プロセスの全体像を把握し、個人が行っている作業が全体の工程の中でどのような位置にあるかを理解できます。
また、業務プロセスが明確になることで、業務の遂行に必要な情報や資源の把握や調達が容易になり、業務の効率化が期待できるでしょう。
品質の向上
SOPを整備することにより、業務プロセスの品質が向上します。
理由として、SOPには業務プロセス全体が記載されており、各ステップにおける作業内容や手順が明確に定義されているため、従業員は常に一定の品質で作業を行えることがあげられます。
また、SOPには品質管理のためのチェックリストや基準が記載されているため、従業員は品質管理の観点からも作業を行うことが可能です。業務プロセスの品質が一定に保たれ、品質低下や不具合発生のリスクが軽減できるでしょう。
品質管理の基礎知識については、以下の記事もご覧ください。
関連記事:品質管理の基本を解説!目的や品質保証との違い、主な手法は?
新人教育の効率化
SOPを整備することにより、新人教育の効率化が期待できます。
SOPには業務プロセス全体が記載されており、各ステップにおける作業内容や手順が明確に定義されているため、新人従業員に対しても作業内容や手順をわかりやすく伝えられるからです。
また、SOPには業務プロセスの背景や目的、実施上の注意点なども記載されているため、SOPを整備することで、OJTの削減による従業員の負担軽減とミスの発生を防ぐことが可能です。
製造現場で新人教育を効果的かつ効率的に行う方法は、以下より専門家が解説する動画をご覧ください。
SOPとマニュアルの違いは?
SOPとマニュアルは、どちらも業務を遂行する上で必要な文書などを指しますが、SOPは業務プロセスに関する文書であり、マニュアルは製品やサービスに関する文書という違いがあります。
まず、SOPは「標準的な作業手順書」という意味であり、特定の業務プロセスにおいて、どのような手順で作業を進めるかを明確に定義することを目的としています。
SOPは、作業の流れや手順を明確にすることで、品質や生産性の向上、失敗の防止などの実現が可能です。
一方、マニュアルは、製品やサービスの使用方法や保守方法、トラブル対応など、製品やサービスに関する情報をまとめた文書です。マニュアルは、ユーザーにとってわかりやすく、簡単に使えるように設計されることが多く、製品やサービスの利用に関する情報を提供することが目的となります。
以下の記事ではマニュアルについて網羅的に解説をしていますので、本記事と併せてご覧ください。
関連記事:マニュアルの意味とは?わかりやすく作るコツと流れを解説
SOPの作成から展開までの6ステップ
SOPの作成から展開まで、以下の6ステップがあります。
- SOPを作る業務/作業を決める
- SOPの目的/使う場面を明確にする
- SOPのテンプレートやフォーマットを決める
- 各手順ごとに内容を盛り込んでいく
- 一部の現場で試す
- 組織全体へ展開する
各ステップについて詳しく見ていきましょう。
SOPを作る業務/作業を決める
まずは、どの業務や作業にSOPを導入するのかを決めます。
例えば、顧客対応や品質管理、製造工程など、組織内で重要な役割を担っている業務や作業が候補になります。SOPを作る業務や作業を決める際には、効率的かつ安全に作業を行うために必要な手順を明確にすることが大切です。
SOPの目的/使う場面を明確にする
次に、SOPの目的や使う場面を明確にします。
SOPの目的は、業務や作業の手順を標準化することで、効率的かつ安全な作業を行うことです。また、SOPを使う場面は、誰でも簡単に手順を確認できるようにするためです。
SOPは、トレーニング用の教材としても役立つので、SOPを利用して付随的な効果も得られるでしょう。
SOPのテンプレートやフォーマットを決める
SOPのテンプレートやフォーマットを決めることは、SOPのわかりやすさや使いやすさに大きく関わってきます。例えば、手順書の最初に目次をつけることで、手順の流れを把握しやすくなるでしょう。また、見出しの大きさや色を統一することで、読みやすくなります。
SOPのテンプレートやフォーマットを統一することで、作成者が異なっても同じルールで作成されるため、一貫性が保たれます。
具体的な形式例としては、以下の2つの形式があります。
フローチャート形式
手順を図や図表で表現し、一目で流れがわかるようにする。
テーブル形式
表形式で手順を示す。作業者が1つ1つの手順をチェックできる。
各手順ごとに内容を盛り込んでいく
SOPの本体である各手順について、具体的な内容を盛り込んでいくことが必要です。手順ごとに細かくわけ、作業者が理解しやすいように説明することが重要です。
また、作業者が実際に作業を行う上で必要となる情報や注意点、必要な機材・道具なども含め、できるだけ詳細に記述することが望ましいといえます。
そのほか、手順ごとにチェック項目を記載することで、作業の確実性を高めることが可能です。
一部の現場で試す
SOPの作成が完了したら、一部の現場で実際に試してみることが必要です。現場で試すことで、実際の作業現場での適用性や不足点などを把握できます。
結果をフィードバックとして取り入れ、必要に応じて改善を行い、最終的なSOP作成が可能になります。
組織全体へ展開する
SOPの全体像を把握しているスタッフに対して、SOPの導入について説明を行い、質問や疑問点に回答します。この段階で、SOPに関する情報の共有を行い、スタッフ全員がSOPを理解することが重要です。また、スタッフのフィードバックを受け付けることで、SOPを改善できるでしょう。
次に、SOPの遵守を徹底するために、スタッフにトレーニングを行います。トレーニングの方法としては、SOPを読んで理解するだけではなく、実際に手順を実践する練習をすることが重要です。
最終段階では、トレーニングを受けたスタッフの理解度や実行能力を確認することも必要です。
SOPの整備で失敗しない4つのコツ
SOPの整備で失敗しないコツを把握すれば、企業にとって有益なSOPの作成が可能です。ここではSOPの整備で失敗しない4つのコツを紹介します。
4つのコツは以下の通りです。
- 実際の現場を知っている人が作成する
- わかりやすい言葉を用いる
- 文章だけで説明しようとしない
- 定期的に中身を更新する
それぞれ具体的に解説しましょう。
実際の現場を知っている人が作成する
SOPは、実際に業務を行う現場での作業手順を明確にするために作成されます。そのため、SOPを作成するのに適しているのは、業務を行う実務者です。
実務者がSOPを作成することで、より実践的な手順が記載され、現場での作業の効率化や品質向上につながるでしょう。
わかりやすい言葉を用いる
SOPは、作業手順を明確にするために作成されるものですが、SOPの内容がわかりにくい場合、作業が滞ってしまうことがあるので注意が必要です。
そのため、わかりやすい言葉を用いることが重要といえるでしょう。また、用語や言葉の定義を明確にすることで、作業者同士の認識差をなくし、作業の質を均一化することも可能です。
文章だけで説明しようとしない
SOPは基本的に文書であるという理由から、文章だけで作成することが多いのが実情です。しかし、作業手順を明確にするために、文章だけで説明しようすれば、わかりにくいというデメリットがあります。
そのため、イラストや写真、動画などを活用して、作業手順をわかりやすく説明することが大切です。視覚的なイメージを持って作業を行うことで、作業のミスやミスのリスクを低減も期待できます。
定期的に中身を更新する
定期的にSOPの内容を見直し、必要な更新を行うことで、さらなる作業効率化や品質の向上を目指しましょう。更新されたSOPは、適切な場所に保存しておくことで、必要な人が必要なときに簡単にアクセスできるようにしておくことが望ましいです。
SOP作成工数を1/3にした効率的な手法とは?
SOPは、企業が業務の効率化や品質の向上、リスク管理などを行う上で欠かせない重要なツールといえるでしょう。
しかし、SOPの作成には時間と手間がかかり、そのために負担を感じている企業も多いのではないでしょうか。そこで、今回はSOP作成工数を1/3にした効率的な手法についてご紹介します。
SOP作成には「動画」が効果的かつ効率的
SOPの作成には、手順の詳細な説明や、作業中のポイントなどを細かく記載する必要があります。
そのため、文章や図表を用いたマニュアルの作成には多くの時間と手間がかかるデメリットがあり、作業負荷は否めません。また文字/写真ベースのSOPでは、作業者も動作が伴う内容を3次元的に理解することが難しいです。
そこで「動画」を使用したSOPの作成が注目を集めています。動画を使用することで、作業の流れや手順の詳細を視覚的に理解できるため、作業者にとって理解しやすく、SOP作成の効率化につながります。
また、動画を作成することで、必要な情報だけを抽出し、冗長な情報の削減が可能です。そのため、作業者がSOPを見るときの情報の取捨選択が容易になり、作業効率が向上するというメリットがあります。
SOP作成工数を紙の1/3にした企業事例
実際に、動画を使用することでSOPの作成の工数を1/3と大幅に削減できた事例があります。
▼SOP作成工数を紙の1/3にした企業事例:児玉化学工業株式会社▼
児玉化学工業株式会社では動画教育システム『tebiki』を用いて、動画でSOPを作成することにより、SOP作成にかかる時間が従来の1/3程度に短縮されました。また、従来のSOPでは作業者が誤解しやすいとされた部分も、動画による説明によって明確になり、作業品質の向上につながりました。
SOP作成において動画を活用することで、効率化につながるだけでなく、作業者の理解度や作業品質の向上にもつながることが期待できるでしょう。
企業がSOP作成に取り組む際には、ぜひ動画の導入を検討してみることをおすすめします。「まずは動画マニュアルの概要を知りたい」を知りたいという方は、以下の資料をご覧ください。

まとめ
この記事では、SOP(標準作業手順書)の意味を解説しました。まとめると以下の通りです。
・SOPとは日本語では標準作業手順書と訳されるツールのこと
・業務プロセスの明確化、品質の向上、新人教育の効率化がSOP作成で可能
・SOPは業務プロセスに関するツール、マニュアルは製品やサービスに関する文書
・SOPの作成から展開までの6ステップの紹介
・SOPの整備で失敗しない4つのコツの紹介
・動画によってSOPの作成の工数が1/3に削減可能
動画によるSOP作成は作業効率を高め、業務負荷を減らし、品質を高めることがわかります。
「tebiki」では、SOPを作成する際、作業内容をスマートフォンやタブレットで撮影し、tebikiのクラウドに保管可能です。また、音声認識システムにより動画撮影時の音声が自動的に字幕になるので、動画編集知識がない人でも簡単に動画を作成できます。
詳しい内容は、tebikiの概要をまとめた資料をご覧ください。あなたの会社のSOPをtebikiの動画作成ツールで作成してみませんか?